会ったことのない元旦那様。「離縁する。新しい妻を連れて帰るまでに屋敷から出て行け」と言われましても、私達はすでに離縁済みですよ。それに、出て行くのはあなたの方です。
 わたしは、もともと弱小国の王族だった。弱小国であるがゆえに、大国に滅ぼされてしまった。両親や兄姉といった家族はバラバラになり、もはやその安否はわからない。すくなくとも、わたしはこうして生きている。さまざまな国をたらいまわしにされ、たどりついたのがこのリミントン王国のカニンガム公爵家だった。カニンガム公爵家は、リミントン王国四公爵家でも一番歴史のある公爵家。この南方地域を領地とし、その広大さと豊かさは、他の領地の比ではない。

 わたしは、そのカニンガム公爵家子息の妻としてここにやって来たはずだった。
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