会ったことのない元旦那様。「離縁する。新しい妻を連れて帰るまでに屋敷から出て行け」と言われましても、私達はすでに離縁済みですよ。それに、出て行くのはあなたの方です。
「うわっ、痛そう」

 すぐうしろからクリスのつぶやきがきこえてきた。

(おおげさね。ちょっと触れただけじゃない)

 わたしの心の中の叫びがきこえるわけがない。

「やっと手を離してくれたわね。何者なのかという質問に対して答える前に、自己紹介をしておきます。まだよね? わたしは、アミ・カニンガム。このカニンガム公爵家の娘よ。そして、このカニンガム公爵家の当主。この大領地の大領主というわけ」

 いっきに告げたけど、愚かなバートには理解出来なかったみたい。

 痛みを忘れ、しゃがみ込んだ姿勢のままこちらを見上げている。 
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