見知らぬ彼に囚われて 〜彼女は悪魔の手に堕ちる〜

さらに年老いた彼

 レオナが目を覚ますとすでに窓の外は明るく、朝になっていた。

 少しして部屋の戸が開く。
 そこに立っていたのは、昨日の男よりもさらに年老いた老年の男だった。

「逃げ出そうとしたのではないだろうね?」

 彼はしわがれた声に、真剣な眼差しでこちらを見ている。

「誰!?」

 レオナは思わず自分に掛けられていた毛布ごと飛び起きる。
 自分に巻きつけられていた縄は解かれていたが、身体はまだ多少ふらつき昨日の疲れがまだ残っている様子。

「……私を忘れたのかい?二日前の晩は可愛がってやっただろう?昨晩は力尽きた君で愉しませてもらったよ」

 よく見れば、昨日の男が一晩のうちに老け込んだのだと分かった。
 寝ていた自分に触れられた悲しさもあるが、それ以上に不審なのはその姿。

「貴方、なぜそんな姿に……?」

 驚きを隠せない彼女に、男は乾いたように笑う。

「……君が力尽きて眠っていたせいで、私が身体を奪う際に嫌がらなかったからだろう?」

「どういう意味?」

「……君が情事の際に嫌がらなければ、私は老け込んでいく。私は嫌がる君とのほうがいいのさ、“悪魔”だからね。昨晩は君が私に、眠ったまま喜んで身体を差し出したのだろう?」

 彼の言葉にレオナは口ごもる。

「そんな、そんなはず……」

 男は何も言えずにいる彼女に近付き、抱き締めた。

「……その身体を抱かせておくれ、レオナ」

 またも自分を翻弄する男。しかし昨晩よりもなぜだか弱々しく感じる。

「そんなこと、出来ません……」

 レオナはそれしか言葉が出て来ず、思わず下を向く。
 聞いた男はまた乾いたように笑い、彼女にそっと口付けた。

「これでいい。さあ食事の前に支度をしよう、レオナ」
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