見知らぬ彼に囚われて 〜彼女は悪魔の手に堕ちる〜
 眠る彼女は出会った頃のように若返り、息も吹き返す。
 しかし自分の姿は、もし彼女が自分を覚えていたとしても気付かないであろうほど変わり果てた。

 後悔してももう手遅れ……

 彼女に口付け与えた精力の代わりに自分は少しずつ年老いていくことを実感し、彼女を精一杯の嘘で騙し続けた。

 自分が死ねば彼女も精を与えられず死ぬ。
 そしていつかくる彼女の死の淵で、真っ直ぐな彼女を真実で苦しめずに済むよう、彼女の同情を断ち切るため。


 彼女が生きていることに自分のいる意味を見出していた彼は、まるで操られるように異形と二度目の契約をした。

 次に異形に奪われたのは、彼の命の時間と彼女への“愛の言葉”。

 それでも、生きたいと強く願った彼女のためと信じて……

………
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