女風に行ったら、モテ期がきた
「ミキさん。営業部に恋人がいるって噂、本当ですか?それって俺のこと?」

噂に尾ひれが付いている。そして前田君、君は自意識の過剰が凄まじいな?

「いえ、その噂はデマですね」

「え?じゃあ、経理部?それとも別の部署?」

「違います、恋人がいないんです。社内はおろか、宇宙規模で」

「宇宙、、」

「そう、宇宙です」

前田君は一瞬混乱した様子だったが、すぐに持ち直した。

「でもミキさんに恋人がいなくて良かった。まだランチの約束も果たせてないのに、どうしようかと思いましたよー」

あーそういえば、そんな約束したような、しなかったような、、

「ミキさん、なかなか誘いに応じてくれないからだいぶ利子が貯まったんで、ランチじゃなくて飲みに変更ですね?」

利子ってなんだ?そんなシステム、聞いたことないぞ?

「早めに精算した方がいいですよ?利子を貯め続けると、、」

「貯め続けると、、?」

「行きつく先は、結婚です」

なんだって!?そんな理不尽なことがあっていいのか!?私は知らぬ間に、とんでもないところに借金をこしらえていたらしい。そんな覚えはないが、早々に精算してしまおう。

「いつ飲みますか?私はいつでも大丈夫です」

、、、、、。

週末、早速前田君と飲みにきていた。よく考えてみたら、私はこの歳になるまで、男性とふたりきりで飲んだことがなかったことに気づいてしまった。なんか、凄く緊張するな。

「ミキさんが眼鏡外して髪を下ろすようになってから、もう結構経ちますよね?なんで急にイメチェンしたんですか?」

「これはイメチェンじゃないんです。頭痛がするようになったので、少しでも刺激を減らしたくてしてるんですよ?」

「いやいやー、俺の目は誤魔化せませんよ?ミキさん、イメチェンする前からガラッと雰囲気変わったじゃないですか?絶対なんかありましたよね?」

参ったな、、菜々美ちゃんみたいに騙されてはくれないらしい。

「恋人じゃないんですよね?それなら、好きな人ができたとか?」

「好きな人は、いたことないですね」

「へーじゃあなんだろう?難しいな、、」

眼鏡をしてないせいで、前田君の表情を見られないのはだいぶ不利だ。言葉の裏で何を考えているかが、まるで読み取れない。

「でも好きな人がいないなら、俺にもまだチャンスがあるってことですよね?」

「チャンス、、」

「ミキさん、結婚も視野に入れて、俺とお付き合いしてみませんか?」

まじか、、借金を精算した意味がまるでないじゃないか。
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