女風に行ったら、モテ期がきた
杏子がスマホで何かを検索し始めた。

「これだ。相手を好きだと感じる瞬間やきっかけだって、、何々?ふとした時に彼のことを考えてしまう」

、、ないな。

「無意識に目で追ってしまう」

ない。

「優しくされて嬉しい」

それはある。でもそんなの、誰にされても嬉しくない?

「かわいいと感じた時」

菜々美ちゃんはかわいい。そういえば、この前優しくされて嬉しかったな。私は菜々美ちゃんが好きらしい。告白した方がいいのか?

「嬉しい、楽しいと感じたことを共有したいと感じる」

うーん、ないわ。

「辛い時、悲しい時、寂しい時にそばにいて欲しいと感じる」

杏子のことかな?いや、話は聞いて欲しいけど、別にそばにいて欲しいわけじゃないかも。

「別れ際もっと一緒にいたいと感じる。予想外の場所で会って嬉しい。他の女性と話してるのを見て嫉妬を感じる。いい匂い、、」

「本当にみんなそんなこと思ってるの?」

「、、さあ?」

さあって、、あーだから杏子も独身なのか。

、、、、、。

翌週、眼鏡と髪型を元に戻した私は、いつも通りの生活に戻っていた。今のところ、発作も起きていない。

「ミキさん、せっかくいい感じだったし、コンタクトにすればいーのにー」

何故か菜々美ちゃんが不満気だ。

「そうですよ。せっかく綺麗な顔なのに、隠してたらもったいないですよ?」

何故か前田君も不満気だ。君はどうしてここにいる?仕事はどうした?

「頭痛がだいぶ治まったので。何かと不便だから、元に戻しただけですよ?」

体調が戻ったと聞いて喜んでくれている菜々美ちゃんをよそに、前田君は不満そうな顔を崩さない。

これまで眼鏡をかけていないせいで気づかなかったが、前田君はなかなかの男前だ。仕事ができて男前な彼が、どうして私に粉をかけてくるのか、まるでわからない。

高城君もそうだ。ふたりは本社採用で、いずれこの営業所からいなくなり、優秀な彼らは順調にいけば出世コースに乗るだろう。

私は結婚相手を探してるわけじゃない。彼らがここにいる間の気楽な関係だと思えば、そう難しく考えなくてもいいのかもしれない。

だとしても、高城君と前田君。どちらかを選ばなくてはいけないのが悩ましい。

随分と贅沢な悩みだな、、そんなことを考えながら家に戻った私は、その悩みが一瞬で吹き飛ぶ光景を目にすることとなった。
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