女風に行ったら、モテ期がきた
休日の午後、残り少ない独身友達の杏子(きょうこ)とカフェでお茶し、愚痴が止まらず、結局そのまま飲みに来ていた。

「最近迷走してんなーとは思ってたけど、犬猫飼ったら結婚できないって有名じゃん?ついに覚悟決めちゃった?」

管理栄養士の資格を取って大学を卒業した杏子は、当時静かなブームとなっていた野菜ソムリエの資格を取り、野菜を美味しく食べることに特化した料理教室を始めた。

美味しくてヘルシー、そしてなんかおしゃれな感じに、二十代三十代の意識高い系女子が食いついて、メディアでも紹介されるようになった。

ネットで、提携農家のオーガニック野菜とその野菜を使用したレシピの合わせ売りを始めると、売上は激増。おしゃれだけに全フリせず、食育や病人食のレシピも取り扱い、着実にユーザーを増やした。

そう、杏子は立派な起業家なのだ。

「ひとりで生きてくって覚悟しちゃえば、あとは本当楽よー。結婚さえ考えなければ、男なんてよりどりみどりだしねー」

短期間ではあったが杏子は婚活をしていた。しかし、それなりに顔の知られた起業家だったことが邪魔をして、いい出会いに恵まれなかったのだ。

「覚悟っていうか、私は元々結婚願望とかないから。単純に癒しが欲しいなと思っただけ」

「癒しねー。だったら尚更男を作れと言いたくなるけど、、男はろくでもないんだもんね?」

「そうそう。『男なんて、ろくなもんじゃない』だね」

付き合いの長い杏子は私の家の事情も全て把握している。酔ってくだを巻く母の真似は、私と杏子の間では鉄板ネタで、杏子は相変わらず大笑いしている。

「あーなんか懐かしいな、ミキのお母さん。男なんて、、とか言うわりに、いつもミキの顔を褒めて、別れた旦那に未練たらたら。本当に好きだったんだろうねー」

「顔がね?」

「そー!顔が!もう開き直ってたもんね?いっそ清々しかったわ!」

「そんな母親を見て育ったから、全く恋愛に興味を持てなかったんだよ。今となっては、恋人なんて面倒だなとしか思えない」

「面倒ねー。彼氏のひとりもいたことないミキが言っても、全然ピンとこないけどね?あーそれなら、、」

杏子はスマホを取り出すと、私にあるサイトを見せてきた。

「女風って知ってる?」

「じょふう、、?」

「女性用風俗。私も最近知って、何度か利用してみたんだよ。そしたらこれが、なかなかどうして悪くなくてね?ちゃんとしたとこなら危なくないし、一線も越えないから、処女のミキにも安心。相手はプロだから後腐れもなく、ただ気持ちよーくなるだけ!凄く癒されるよ?」

杏子、、ちょっと奔放過ぎやしないか?あんたこそ、いっそ清々しいわ。
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