悪女がお姫さまになるとき
簡単な食事の後に、王城から迎えに来た騎士と合流する。
中世の絵画に描かれた騎士のような防御の帷子を肩から胸にかけ直剣を腰に刷く姿に、本当に異世界に来たのだと感動を覚える。
まさか小説や漫画のような話が自分の身に起こるとは思わなかった。
自分の状況は、いわゆる異世界に召喚された聖女のようなものに分類されるのかもしれない。
悪女のわたしがそんな窮地を助けるヒロイン役になるとは思わなかったのだけど。
そしてもしかして、この冷たい表情の魔術師さまに愛されることもあるのだろうか?
シャディーンでなければ王子さまに愛されるのかもしれない。
自分都合の妄想が暴走し、思わず口元をだらしなく緩ませてしまう。
完全に、安心してほしい。
絶対に、悪いことにはならない。
わたしにしか、できない。
四択試験では絶対や全くなど断定の言葉は、間違いの選択肢だ。
シャディーンは何度も口にする。
それがかえって一抹の不安となる。
喉の奥に小骨のように刺さったような不快さを、わたしはあえて無視したのだった。