幸せでいるための秘密
淫靡な水音が頭蓋に響いて、血の巡りが速度を上げていく。
触れられた肌が次々に熱を帯び、身体の奥が疼き出す。
常夜灯に淡く照らされた二人の身体のシルエット。びく、と悶える私の背中を後ろから抱きかかえ、樹くんは濡れた唇をうなじから下へと這わせていく。
「んっ……」
漏れかけた声を喉で止めると、樹くんの長い指が、たしなめるように喉をなぞった。指先が唇を割って口の奥へと侵入する。そうしながら、反対の手は今もなお私の秘められた奥深くを緩やかに拡張し続けている。
「やめて、ゆび、かんじゃう」
「なら、頑張って口を開けていてくれ」
仕方なく舌先で彼の指を舐めていると、さっきまでぎりぎりのところで押しとどめられていた嬌声が、遮るものを失って次から次へとこぼれ始めた。あ、あ、と唾液まみれの口でみっともなく喘ぐ私を、樹くんは瞳を細めて満足そうに眺めている。
やがて、シーツを握る私の指に力が入らなくなってきた頃、ようやく唇が解放されるとともに額に優しくキスをされた。下腹部を掻き回していた圧力がずるりと抜ける。小柄な私が大きな彼を受け入れるのには時間がかかる。
「待って」
ベッドボードの引き出しを開けようとした樹くんの手を、私はとっさに掴んでいた。
少し戸惑った樹くんの顔が、暗がりの中で近づいてくる。
「どうした?」
「あの……本当はもっと前に言おうと思ってたんだけど」
荒い呼吸をごまかすように、私は鼻でゆっくりと息を吸う。
「私、ピル飲んでるから……それ、つけなくても平気なの」
私の言うそれの意味が、樹くんにはすぐには理解できなかったらしい。
軽く首を傾げられて、私は仕方なくそのものの名前をはっきり答える。それでも合点がいかなかったのか、樹くんは今度は反対側に首を捻った。
「え?」
「ええと、ストーカーでバタバタしてた頃、生理不順がちょっとひどくなっちゃってね。婦人科に行ったらピルを勧められて、今日までずっと飲んでたの。今月は一度も忘れてないよ」
生理不順を整えるための低用量ピルは、正しく飲んでいれば99パーセント以上の避妊効果がある。もちろん本当はきちんと避妊具をつけなくてはいけないのだけど、この日の私は何かに急き立てられるまま言葉を続けた。
「だから……そのまま」
ベッドの上に両手をついて、私は樹くんへにじり寄る。薄暗がりの部屋の中で、つばを飲み込んだ彼の喉仏が上下する。
「樹くん」
私の気持ちを、私自身に確かめさせて。
指先が彼自身へと触れようとしたその瞬間、
触れられた肌が次々に熱を帯び、身体の奥が疼き出す。
常夜灯に淡く照らされた二人の身体のシルエット。びく、と悶える私の背中を後ろから抱きかかえ、樹くんは濡れた唇をうなじから下へと這わせていく。
「んっ……」
漏れかけた声を喉で止めると、樹くんの長い指が、たしなめるように喉をなぞった。指先が唇を割って口の奥へと侵入する。そうしながら、反対の手は今もなお私の秘められた奥深くを緩やかに拡張し続けている。
「やめて、ゆび、かんじゃう」
「なら、頑張って口を開けていてくれ」
仕方なく舌先で彼の指を舐めていると、さっきまでぎりぎりのところで押しとどめられていた嬌声が、遮るものを失って次から次へとこぼれ始めた。あ、あ、と唾液まみれの口でみっともなく喘ぐ私を、樹くんは瞳を細めて満足そうに眺めている。
やがて、シーツを握る私の指に力が入らなくなってきた頃、ようやく唇が解放されるとともに額に優しくキスをされた。下腹部を掻き回していた圧力がずるりと抜ける。小柄な私が大きな彼を受け入れるのには時間がかかる。
「待って」
ベッドボードの引き出しを開けようとした樹くんの手を、私はとっさに掴んでいた。
少し戸惑った樹くんの顔が、暗がりの中で近づいてくる。
「どうした?」
「あの……本当はもっと前に言おうと思ってたんだけど」
荒い呼吸をごまかすように、私は鼻でゆっくりと息を吸う。
「私、ピル飲んでるから……それ、つけなくても平気なの」
私の言うそれの意味が、樹くんにはすぐには理解できなかったらしい。
軽く首を傾げられて、私は仕方なくそのものの名前をはっきり答える。それでも合点がいかなかったのか、樹くんは今度は反対側に首を捻った。
「え?」
「ええと、ストーカーでバタバタしてた頃、生理不順がちょっとひどくなっちゃってね。婦人科に行ったらピルを勧められて、今日までずっと飲んでたの。今月は一度も忘れてないよ」
生理不順を整えるための低用量ピルは、正しく飲んでいれば99パーセント以上の避妊効果がある。もちろん本当はきちんと避妊具をつけなくてはいけないのだけど、この日の私は何かに急き立てられるまま言葉を続けた。
「だから……そのまま」
ベッドの上に両手をついて、私は樹くんへにじり寄る。薄暗がりの部屋の中で、つばを飲み込んだ彼の喉仏が上下する。
「樹くん」
私の気持ちを、私自身に確かめさせて。
指先が彼自身へと触れようとしたその瞬間、