幸せでいるための秘密
「あとは少しずつ時間をかけて、中原が元気になってくれればそれでよし。その上で改めて俺とのことを考えてもらえれば、と……その矢先に、里野が再び現れた」
波留くんと二人でショッピングモールへ出かけた帰り道。
突然の彰良の登場に、私はほとんど震えることしかできなかった。それでも毅然とした態度で拒絶できたのは、隣に波留くんがいてくれたからだ。
「実は里野の復縁の申し出は、可能性の一つとしてあり得なくはないと思っていた。警察官は交際関係を職場へ申告する必要がある。里野が中原と別れたことも、いずれ奴の上司の耳に入るだろう。先ほども言ったように、里野は出世レースに出遅れている。上司との面談で余計なマイナスイメージを持たれるのを恐れ、面談前に中原に復縁を迫りに来るかもしれない」
「そうだったんだ……」
「ただ、これについては里野が上司に嘘をつけばなんとでもなることだ。だから可能性としては低いと考えていたんだが、奴は結局現れた。あの頃はちょうど、きみが心を開きかけてきてくれていた矢先だったから、本気であいつを恨んだよ」
ふ、と波留くんは小さく笑う。
それから視線を床へ逸らし、ため息交じりに声を落とした。
「先に言っておくが、対里野において俺はほとんど後手に回っている。まず俺は今勤めている事務所を辞めて、弁護士として独立事務所を立ち上げようと思った。そこで中原を事務員として雇えば、いつでも俺が傍にいられる。でも結局、俺が独立に手間取っている間に、里野の方は俺の家まで突き止めた」
突然の彰良の来訪。大丈夫だと強がる私に、波留くんは無理やり仕事を切り上げて走って帰ってきてくれた。
後手に回っていると言うけど、波留くんはできる範囲で本当にたくさん私のことを助けてくれたと思う。それは身体的な危険だけじゃなくて、精神的な恐怖についても同じこと。家に帰れば彼がいる。その事実が、どれほど私の心を支えてくれたことだろう。
「中原は中原で病院に駆け込んだり、きみなりに工夫して里野から逃げているのはわかっていた。だが警察はやはりあてにならないし、このまま永遠に逃げ続けるわけには……」
「ちょ、ちょっと待って。なんで私が病院に逃げてたこと知ってるの? 一度も話してないよね?」
波留くんと二人でショッピングモールへ出かけた帰り道。
突然の彰良の登場に、私はほとんど震えることしかできなかった。それでも毅然とした態度で拒絶できたのは、隣に波留くんがいてくれたからだ。
「実は里野の復縁の申し出は、可能性の一つとしてあり得なくはないと思っていた。警察官は交際関係を職場へ申告する必要がある。里野が中原と別れたことも、いずれ奴の上司の耳に入るだろう。先ほども言ったように、里野は出世レースに出遅れている。上司との面談で余計なマイナスイメージを持たれるのを恐れ、面談前に中原に復縁を迫りに来るかもしれない」
「そうだったんだ……」
「ただ、これについては里野が上司に嘘をつけばなんとでもなることだ。だから可能性としては低いと考えていたんだが、奴は結局現れた。あの頃はちょうど、きみが心を開きかけてきてくれていた矢先だったから、本気であいつを恨んだよ」
ふ、と波留くんは小さく笑う。
それから視線を床へ逸らし、ため息交じりに声を落とした。
「先に言っておくが、対里野において俺はほとんど後手に回っている。まず俺は今勤めている事務所を辞めて、弁護士として独立事務所を立ち上げようと思った。そこで中原を事務員として雇えば、いつでも俺が傍にいられる。でも結局、俺が独立に手間取っている間に、里野の方は俺の家まで突き止めた」
突然の彰良の来訪。大丈夫だと強がる私に、波留くんは無理やり仕事を切り上げて走って帰ってきてくれた。
後手に回っていると言うけど、波留くんはできる範囲で本当にたくさん私のことを助けてくれたと思う。それは身体的な危険だけじゃなくて、精神的な恐怖についても同じこと。家に帰れば彼がいる。その事実が、どれほど私の心を支えてくれたことだろう。
「中原は中原で病院に駆け込んだり、きみなりに工夫して里野から逃げているのはわかっていた。だが警察はやはりあてにならないし、このまま永遠に逃げ続けるわけには……」
「ちょ、ちょっと待って。なんで私が病院に逃げてたこと知ってるの? 一度も話してないよね?」