婚約とは安寧では無いと気付いた令嬢は、森の奥で幸せを見つける
第8話
それから数日が経ち、ウイルはパラセコルト王城を訪れる。
その身に深緑の紋章を身に着け、城へと踏み込む。
身形は当然に、森での生活に適したものではない。
一流の貴族たらんとする威光だ。
その姿を見て咎める者はいない。何故なら深緑の紋章とはこの国に於いて王の直系、その次の位として与えられるものであるからだ。
王の一族に連なる者の証。
つまりは、このウイル――ウイル・ロゥ・ラステ・コルスタルこそが、王家の近縁に当たる者である。
分家筋の彼は、普段に於いては城へと顔を出すことは滅多に無い。
幼い頃より世俗を苦手とし、人と関わりを持つ事自体に辟易していたからである。
そんな彼が何故?
王家のみが住む事を許された城の上階、そのある一室の部屋を遠慮も無しに扉を開き放ち勢いに任せ飛び込むが如く踏み入る。
「久しぶりだなあ、ウイル。相も変わらず無作法な男だ。品性を疑うぞ」
「ラーテンッ!! 下卑た貴様の顔なぞ見たくも無いが、貴様の呼び出しに応じてやったぞ!!」
部屋の中には、この国の王子たるラーテンが悠々とソファに腰を掛けていた。
テーブルの上に並べられた酒瓶の数から察するに、既に酔いが回っているようだ。
だがそれに構わずに、ウイルは荒々しく言葉を投げかける。
その身に深緑の紋章を身に着け、城へと踏み込む。
身形は当然に、森での生活に適したものではない。
一流の貴族たらんとする威光だ。
その姿を見て咎める者はいない。何故なら深緑の紋章とはこの国に於いて王の直系、その次の位として与えられるものであるからだ。
王の一族に連なる者の証。
つまりは、このウイル――ウイル・ロゥ・ラステ・コルスタルこそが、王家の近縁に当たる者である。
分家筋の彼は、普段に於いては城へと顔を出すことは滅多に無い。
幼い頃より世俗を苦手とし、人と関わりを持つ事自体に辟易していたからである。
そんな彼が何故?
王家のみが住む事を許された城の上階、そのある一室の部屋を遠慮も無しに扉を開き放ち勢いに任せ飛び込むが如く踏み入る。
「久しぶりだなあ、ウイル。相も変わらず無作法な男だ。品性を疑うぞ」
「ラーテンッ!! 下卑た貴様の顔なぞ見たくも無いが、貴様の呼び出しに応じてやったぞ!!」
部屋の中には、この国の王子たるラーテンが悠々とソファに腰を掛けていた。
テーブルの上に並べられた酒瓶の数から察するに、既に酔いが回っているようだ。
だがそれに構わずに、ウイルは荒々しく言葉を投げかける。