選んでください、聖女様!
6
登城したその日の晩、夕食を摂り終えたセラ達一家の家のチャイムが鳴った。
「セラ、出てくれる?」
「はいはーい」
母ゼナの声に頷き、玄関のドアを開けると、そこには夫候補の二人が外にいた。
「へ?」
急に何? そう思ったセラへ、クリスタスとユーゴスは目の前に花束を差し出した。
「え、っと……これは?」
「君へのプレゼントさ」
クリスタスはそう言い、真紅の薔薇の花束を差し出してきた。
「どうぞ、受け取ってください」
ユーゴスは、魔石で出来た小さな花束を差し出してきた。
「ありがとうございます」
どちらの花も美しかった。クリスタスのくれた薔薇の花は一本一本が綺麗に刺抜きされており、とてもいい香りがする。ユーゴスのくれた小さな花束は全て魔石で出来ており、枯れることもない。観賞用にはぴったりだ。
「あれ? アンディは?」
確か、プレゼントは三人一斉に渡すと言っていた筈……。そう思い辺りを見渡すが、アンディの姿がない。
「彼は遅番で来れなくて……」
「待っていたんだけど、先に言ってくれと言われてね」
その言葉に、何故だか少し残念に感じた。何故だろうか?
「すまん、待たせた!」
そう言い、肩で息をしながら二人の背後に現れたアンディ。手には数本の花が握られていた。
「それは……」
ユーゴスはやれやれと肩を落とす。どう見ても道端で摘んできた花たちに、プレゼントとして不相応だという反応だった。
「わりい、花屋がもう全部締まってて……お前が昔好きだっていった花しか見つけられなかった」
そう言って差し出されたのは、小さな数本の菫の花。アンディが騎士隊に入隊するよりも前に、一度だけ言ったことがあった。それを忘れていなかったようだ。
「……ありがと。嬉しいよ」
差し出された小さな花に、つい顔が綻んでしまう。栞にして大事にとっておこう。そう、思った。
三人が帰り、リビングに戻る。父セネトは「どうだい?」と声を掛けた。
「誰にするか、決まったかい?」
「まだ二日目よ、お父さん。決まる訳ないでしょ」
「そうかい? まあ、お前がそう言うならそういうことにしておこう」
父の何か含んだような台詞を聞きながら、花瓶を探し始める。こんなに大量の薔薇の花を活けられる花瓶が、家にあっただろうか――。
「あ、菫の花だわ。珍しい」
「ね。この時期はあんまり咲いてないものね」
そう言ってから、アンディが肩で息をしていたことを思い出す。花屋が全て締まっていたとも言っていた。ということは、夕方の公園で必死に探してくれていたということだ。
「姉さん? 顔、真っ赤よ。大丈夫?」
「へ?」
ティールに言われて、顔が真っ赤に染まっていることに気付く。昨日までリディスのことが好きだったのに、少しずつ、気持ちが変わりだしている。
「うんうん。恋だね」
そう呑気に言う父に、拳骨をお見舞いしたくなったセラだった。
「セラ、出てくれる?」
「はいはーい」
母ゼナの声に頷き、玄関のドアを開けると、そこには夫候補の二人が外にいた。
「へ?」
急に何? そう思ったセラへ、クリスタスとユーゴスは目の前に花束を差し出した。
「え、っと……これは?」
「君へのプレゼントさ」
クリスタスはそう言い、真紅の薔薇の花束を差し出してきた。
「どうぞ、受け取ってください」
ユーゴスは、魔石で出来た小さな花束を差し出してきた。
「ありがとうございます」
どちらの花も美しかった。クリスタスのくれた薔薇の花は一本一本が綺麗に刺抜きされており、とてもいい香りがする。ユーゴスのくれた小さな花束は全て魔石で出来ており、枯れることもない。観賞用にはぴったりだ。
「あれ? アンディは?」
確か、プレゼントは三人一斉に渡すと言っていた筈……。そう思い辺りを見渡すが、アンディの姿がない。
「彼は遅番で来れなくて……」
「待っていたんだけど、先に言ってくれと言われてね」
その言葉に、何故だか少し残念に感じた。何故だろうか?
「すまん、待たせた!」
そう言い、肩で息をしながら二人の背後に現れたアンディ。手には数本の花が握られていた。
「それは……」
ユーゴスはやれやれと肩を落とす。どう見ても道端で摘んできた花たちに、プレゼントとして不相応だという反応だった。
「わりい、花屋がもう全部締まってて……お前が昔好きだっていった花しか見つけられなかった」
そう言って差し出されたのは、小さな数本の菫の花。アンディが騎士隊に入隊するよりも前に、一度だけ言ったことがあった。それを忘れていなかったようだ。
「……ありがと。嬉しいよ」
差し出された小さな花に、つい顔が綻んでしまう。栞にして大事にとっておこう。そう、思った。
三人が帰り、リビングに戻る。父セネトは「どうだい?」と声を掛けた。
「誰にするか、決まったかい?」
「まだ二日目よ、お父さん。決まる訳ないでしょ」
「そうかい? まあ、お前がそう言うならそういうことにしておこう」
父の何か含んだような台詞を聞きながら、花瓶を探し始める。こんなに大量の薔薇の花を活けられる花瓶が、家にあっただろうか――。
「あ、菫の花だわ。珍しい」
「ね。この時期はあんまり咲いてないものね」
そう言ってから、アンディが肩で息をしていたことを思い出す。花屋が全て締まっていたとも言っていた。ということは、夕方の公園で必死に探してくれていたということだ。
「姉さん? 顔、真っ赤よ。大丈夫?」
「へ?」
ティールに言われて、顔が真っ赤に染まっていることに気付く。昨日までリディスのことが好きだったのに、少しずつ、気持ちが変わりだしている。
「うんうん。恋だね」
そう呑気に言う父に、拳骨をお見舞いしたくなったセラだった。