選んでください、聖女様!
9
「はああ……」
家に帰り、誰もいないリビングで一人項垂れるセラ。それもこれも、ユーゴスとクリスタスの所為だ。何故、ああも愛おしそうに見つめてくるのだろうか。
「困ったなあ……」
夫候補は三人。明後日はアンディとお茶会だ。アンディにまで、あのように熱い眼差しを向けられてしまうのだろうか――。考えただけで頬が赤くなりそうだ。アンディは幼馴染だし、他の二人よりは気楽にお茶会も出来そうだと考えてはいるが、リディスへの失恋の後からまともに顔を合わせられていない。それがどう出るかだ。
「ただいま」
玄関からティールの声が聞こえた。セラは顔を出し、「おかえり」と挨拶をする。
「姉さん、今日のお茶会はどうだったの?」
「それが……今日は殿下だったんだけど、一目惚れだったんだって言われて……」
何度か王族が礼拝堂に来ているし、殿下も来たことがあるのは知っているが、実は初めての出会いは覚えていないのだ。それがどうしても申し訳なくなってしまう。そのことを話したら、ティールは小さく笑った。
「まだ二歳の時でしょ? 覚えてないのは仕方ないと思うわ」
「そうなんだけどさ……それでも申し訳ないと思っちゃうのよね」
「でも凄いなあ……そんな小さい頃に一目惚れだなんて」
ティールはうっとりとした表情を浮かべながら羨ましがった。そうはいっても、あんたにはリディスが居るでしょうに……。
「でも、殿下の婚約者様が一番すごいと思う。周りから相当言われててもおかしくないのに、それでも殿下の婚約者を降りるとは言ってないもん」
そう、クリスタスの婚約者は婚約を破棄するとは口にしていない。クリスタスが夫候補に立候補してもだ。何代か前の王族は立候補した後、婚約を破棄されている事例もあるというのにだ。それ程、クリスタスのことを愛しているということだろう。
(殿下には悪いけど、私としては婚約者様と幸せになって欲しいんだよね……)
そうでなければ、婚約者が報われない気がしてならない。そう考えると、ユーゴスかアンディのどちらかに絞られる。だが、ああも熱い眼差しで見つめられると、殿下の本気も伝わってきて何も言えなくなってしまう。
「明後日は誰とお茶会なの?」
「アンディと」
その言葉に、ティールは驚いた顔をした。まあ、驚くのは仕方ないと思うが。
「アンディさん、遂に姉さんにアプローチかけたのね!」
「へ?」
言っている意味がわからず、セラは首を傾げた。どういう意味だ?
「姉さん鈍いから気付いてなかったのね……アンディさん、姉さんに見合う男になるんだって言って、騎士隊に入隊したんだよ?」
「鈍いって言わないでよ、もう……」
知らなかった事実に内心驚く。そんな小さい頃から私のことが好きだったの? あいつ……。
「そっかあ……。姉さん、大変だろうけど後悔しないようにね」
ティールの言葉が、重くのしかかる。そう、これは私だけの問題ではない。『夫候補』三人の未来も変えてしまう出来事でもあるのだ。セラは大きく頷き、ティールに微笑んだ。
家に帰り、誰もいないリビングで一人項垂れるセラ。それもこれも、ユーゴスとクリスタスの所為だ。何故、ああも愛おしそうに見つめてくるのだろうか。
「困ったなあ……」
夫候補は三人。明後日はアンディとお茶会だ。アンディにまで、あのように熱い眼差しを向けられてしまうのだろうか――。考えただけで頬が赤くなりそうだ。アンディは幼馴染だし、他の二人よりは気楽にお茶会も出来そうだと考えてはいるが、リディスへの失恋の後からまともに顔を合わせられていない。それがどう出るかだ。
「ただいま」
玄関からティールの声が聞こえた。セラは顔を出し、「おかえり」と挨拶をする。
「姉さん、今日のお茶会はどうだったの?」
「それが……今日は殿下だったんだけど、一目惚れだったんだって言われて……」
何度か王族が礼拝堂に来ているし、殿下も来たことがあるのは知っているが、実は初めての出会いは覚えていないのだ。それがどうしても申し訳なくなってしまう。そのことを話したら、ティールは小さく笑った。
「まだ二歳の時でしょ? 覚えてないのは仕方ないと思うわ」
「そうなんだけどさ……それでも申し訳ないと思っちゃうのよね」
「でも凄いなあ……そんな小さい頃に一目惚れだなんて」
ティールはうっとりとした表情を浮かべながら羨ましがった。そうはいっても、あんたにはリディスが居るでしょうに……。
「でも、殿下の婚約者様が一番すごいと思う。周りから相当言われててもおかしくないのに、それでも殿下の婚約者を降りるとは言ってないもん」
そう、クリスタスの婚約者は婚約を破棄するとは口にしていない。クリスタスが夫候補に立候補してもだ。何代か前の王族は立候補した後、婚約を破棄されている事例もあるというのにだ。それ程、クリスタスのことを愛しているということだろう。
(殿下には悪いけど、私としては婚約者様と幸せになって欲しいんだよね……)
そうでなければ、婚約者が報われない気がしてならない。そう考えると、ユーゴスかアンディのどちらかに絞られる。だが、ああも熱い眼差しで見つめられると、殿下の本気も伝わってきて何も言えなくなってしまう。
「明後日は誰とお茶会なの?」
「アンディと」
その言葉に、ティールは驚いた顔をした。まあ、驚くのは仕方ないと思うが。
「アンディさん、遂に姉さんにアプローチかけたのね!」
「へ?」
言っている意味がわからず、セラは首を傾げた。どういう意味だ?
「姉さん鈍いから気付いてなかったのね……アンディさん、姉さんに見合う男になるんだって言って、騎士隊に入隊したんだよ?」
「鈍いって言わないでよ、もう……」
知らなかった事実に内心驚く。そんな小さい頃から私のことが好きだったの? あいつ……。
「そっかあ……。姉さん、大変だろうけど後悔しないようにね」
ティールの言葉が、重くのしかかる。そう、これは私だけの問題ではない。『夫候補』三人の未来も変えてしまう出来事でもあるのだ。セラは大きく頷き、ティールに微笑んだ。