演歌界のイケオジ『神月京介』の恋心
 多分相手は芸能人だとか、私よりも魅力的で大人なひとだろう。

 誰なの?とか、一切質問の出来る隙間はなくて「そうなんだね」とだけ言った。

 外を見た。

 雪は相変わらず降り続いていて、勢いは増していた。

 ずっと降り続けていれば、ずっときょうくんと一緒にいられるのにな――。

 ずっと一緒にいたいから『ずっと降っていて』と、雪にお願いをした。だけどその願いは届かなかった。


***

 閉じ込められてから五日経つと雪は止み、帰れる状態になった。

 明日帰るから、彼とはもう一緒にいられなくなるんだ。離れることを考えるだけでドロドロとした底なし沼に気持ちが沈んでしまいそう。

 その日の夜、私は勇気を出して彼の部屋に行った。最後の日、何でもいいからゆっくりと話をしたくて。

 一瞬ドアの前でためらったけれどノックをした。するとお風呂からあがったばかりだと思われるパジャマ姿の彼がすぐに出てきた。髪の毛が少し濡れていて、いつもよりもドキッとした。

「どうしたの?」
「あの、ただなんとなく、最後の日だから話したいなって思って」

 彼の口元だけが微笑んだ。

「おいで」

 彼の部屋の中に入った。
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