演歌界のイケオジ『神月京介』の恋心
 彼の部屋は荷物が多く、私よりも長く滞在しているのが分かる。

 ベッドに並んで座った。
 私は彼と目を合わせられなくて、足元を見ながら話した。

「今回きょうくんと会えて、色んな話が出来て、嬉しかった。ここにいる間、夢なのかな?って思った」

「自分も、嬉しかったよ」

「離れるのが寂しい。私ね……」

 彼を見つめた。首をかしげながら優しい眼差しで彼は私を見ている。その優しい眼差しは本当に昔から変わらない。

「昔ね、きょうくんのこと好きだったの」

 一緒にいられるのが最終日だからか、積極的な発言をしてしまった。だって、もう一生会えないかもしれないし――。

 そんな発言をしている自分にも驚いた。
 小さい頃からずっと隠していた気持ちだったから。

「……知ってた」

 彼の言葉を聞いて更に驚き、私の心臓が跳ね上がった。気づいていたなんて、一切思っていなかったから。いつどこでどうやって気づかれたのだろうと気になるけれど、それよりもこの流れで今の気持ちも伝えたくなった。

「そうなんだ。あのね、今も……」

 伝えようとすると、息苦しくなってきて言葉が詰まる。彼を見つめている自分の瞳が濡れてきているのが分かる。ずっと沈めていた恋心を直接彼にぶつけようとしていたから。

 たったの二文字なのに、その言葉がなかなか言えなくて、でも彼はじっと待っていてくれている。

「好き」

 息を吐くように、言葉をお腹の底から吐き出した。

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