演歌界のイケオジ『神月京介』の恋心

一年後

 彼と再会してから一年が過ぎた。
 今日は約束の日。

 はたして、彼はペンションに来てくれるのだろうか。もう一度、会えるのだろうか。

 外に出た。雪は降ってなく晴れていた。

 去年の、彼との別れ際の時間を思い出す。彼の背景には太陽があった。とても彼に似合っていた。

「きょうくんの歌、生きる支えになってるよ! 応援してるから」って言ったら、ファンに見せるような完璧な笑顔をくれた。

 やっぱり自分がいる世界とは違う別世界にいる人だと思った。そんなことを思い出していると、彼は来ないんじゃないかな?って思えてくる。




 今年も一応スキー道具を車に積んで目的地のペンションに向かう。
 
 ペンションに向かう途中にあった駅の駐車場で休憩をした。その時ふと頭の中に、彼が作詞したデビュー曲が流れてきたから、スマホで彼の曲を検索して流してみた。

 題名は『千日紅』。

 千日紅ってなんだろうと思い、曲が終わった後、ネットで調べてみた。

 ぽんぽんとした可愛らしい花らしい。花言葉は、永遠の愛や色あせない恋だった。自分の、彼への気持ちにピッタリだった。

 去年再会して、改めて私はずっと長い間彼のことが好きだったのだと実感した。花言葉のように色あせず。

 彼は引退したいと言いながらも、半年後には復活し、相変わらず爽やかなイケオジ演歌歌手として、活動していた。

 現在知っている彼の状況はそれだけ。

 連絡先はあえて交換しなかったし、彼のプライベートは一切知らない。普段何をしているのかはすごく気になる。
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