演歌界のイケオジ『神月京介』の恋心
 ペンションに着いた。

 彼がいるかなと緊張しながらペンションのドアを開けた。開けるとオーナーが「いらっしゃい」と声をかけてきた。

「こんにちは、オーナー。今日他のお客さんはいないんですか?」

「あぁ、来ているよ」

 オーナーがそう言った時、スーツ姿の彼が階段からおりてきた。

「ゆらちゃん、久しぶり」
「きょうくん……」

 一年ぶりの再会。
 約束通りに来てくれたんだ。

 相変わらず恰好良かった。
 姿を見ただけで私の心臓がうるさくなる。

「ゆらちゃん、来てくれたんだね。ありがとう」
「こっちこそ、ありがとう」
「ゆらちゃん、ちょっと休んだら部屋で話さない?」

 私は二階の泊まる部屋に荷物を置き、コートを脱ぐと、深呼吸だけして休まずに彼の部屋に行った。

 彼と目が合うと、微笑んでくれた。
 去年みたいにベッドの上にふたりで座る。

「ゆらちゃん、元気だった?」
「うん」

 座ってるふたりの距離が去年よりも微妙に近い気がして、それを意識したら鼓動が更に早くなってきた。

「去年言ってた、身の回りの整理済んだよ」
「その身の回りの整理って何かな?って気になってたんだけど……」
「身の回りの整理っていうか、まずはこれあげる」

 彼は鞄から瓶をひとつ取り出し、私の手の上に乗せた。小さな丸い小瓶の中にピンク系のぽんぽんとした可愛い花が入っていて、オイルに漬けられていた。

「これって千日紅?」
「そう、千日紅のハーバリウム」
「可愛いね」
「可愛いよね。ゆらちゃんの雰囲気に似てるなって思って。そしてね、自分の、ゆらちゃんへの気持ち」
「気持ち……もしかして花言葉?」
「そう、花言葉。知ってるの?」
「うん、実は偶然さっき調べた」

 花言葉は、永遠の愛や色あせない恋。

 ちょっと間があいてから、彼は照れくさそうにはにかみながら言った。

「ずっと、ゆらちゃんに対してそうだったから」
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