演歌界のイケオジ『神月京介』の恋心
「ずっと?」
「うん、ずっと。だから去年告白してくれた時、すごく嬉しかった。けど、こんなに年が離れてるし。頑張ってゆらちゃんと釣り合うように若返った」

 彼は一年間、見た目が少しでも若くなるように美顔器や顔の体操、そしていつもしているトレーニングの量も更に増やし、とにかく頑張ったらしい。そんなことしなくてもイケオジすぎるし、むしろ私が頑張らないと彼と釣り合わないのに。

 向上心が高い人ってひたすら上を目指していて、すごい。きっと彼は、やると決めたらとことん終わりなき上を目指すタイプだろう。

 だから今も空にいるような存在で。
 でも少しだけ、近づけた気もする。


「じゃあ、そのための一年間だったの? 極道は?」

「極道? ドラマの主題歌のこと? そろそろドラマの告知が始まると思う」

 そっちの世界にいる訳じゃなかったんだ。
 すごい勘違いをしていた。

「あと、一年間ってのはこれから活動をどうするのかも、告白するまでにはっきりと決めたくて。でもゆらちゃんが去年の帰り際に『生きる支えになってる』って歌のこと言ってくれたから、続けることにした。ありがとう」

 続けて彼は言った。

「ゆらちゃん、こんな年の離れたおじさんでもいいなら、付き合ってほしい」

 ――もちろんです。

 私は「はい」と笑顔で頷いた。

***

 こうして私の長い片思いは終わり、初恋の人『神月 京介』と、お付き合いを始めた。そして地元を離れ、彼と同棲も始めた。

 ずっとただのファンだったけれど、これからはファンであり、恋人だ。

 彼は自分のことを『こんなおじさん』と何回も何故か申し訳なさそうに言っているけれど。私から見たら、とても頼りになって恰好いい、世界一大好きなイケオジだ。


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