演歌界のイケオジ『神月京介』の恋心
 雪は続いた。

 オーナーの予想によると、一週間ぐらい身動き取れなくなるかもということだった。

 客はひとりで来ている若い男の人、六十代ぐらいの夫婦、きょうくんと同じくらいの男の人、そしてきょうくんと私の五組だった。

 全員落ち着いている雰囲気で話しやすかった。それに生活も普通に出来るし、ここに一週間いても苦にならないと思う。

 食事も料理上手なオーナーが作っていて、うちで作るよりも美味しい。その日の夜もサクサクとした美味しい天ぷら定食で、満足だった。お風呂に入ってから部屋に戻り、持ってきていた小説を読んだりSNSを見たりしてくつろいだ。

 そろそろ眠りにつこうかなと、部屋の明かりを消すと音が気になる。
 窓に風や雪がぶつかる音。ガタガタとなり、今にも窓が割れそうな音で少し怖い。

 憂鬱な気分でいた時、隣の部屋と繋がっている壁がコンコンとなった。

 なんとなく私は控えめに叩いて音を返した。すると再びまた音が鳴る。

 これは故意に誰かが叩いているような。
 隣って誰だっけ?

 考えていると今度はドアがコンコンとした。

「はい」

 そっとドアを開けると、きょうくんが立っていた。

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