演歌界のイケオジ『神月京介』の恋心
 緊張が収まらなくて、なかなか眠れなかった。けれどしばらくすると、いつの間にか眠っていた。

 今回も朝まで手を繋いでくれているのかな?って思っていたけれど。

 目覚めた時には彼の姿がなかった。


 空白となった部分、私が眠るまで彼がいてくれた場所を眺め、虚しさがよぎる。

 あの時と違って今の私は大人だ。

 人によっては身体を重ねるのは好きな相手じゃなくても出来る。仲の良い恋人同士でさえもそういう行為は恋や愛の通過点で、決して愛の完成部分ではないと思っている。

 だけど、彼が私に手を出してきて大人の関係になって。奇跡的に愛が完成して、心の部分でも深い繋がりが出来たらいいなとか、彼が部屋に入ってきた瞬間から欲望が薄らと渦巻いていた。

 だけど何もなかった。
 誘惑したらどうなった?

 あぁ、無駄なことを考えるのは辞めよう。彼にとって私はいつまでも妹や子供みたいな存在で、女ではないという事実が目の前にあるだけだ。

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