君は私のことをよくわかっているね
「でしたら……」

「だからこそ、私はあの子を妃なんてつまらない枠に当てはめる気はないんだ」


 私の言葉に孝明はほんのりと目を見開く。それから私は、桜華を思って目をつぶった。


「妃というのは所詮、ただの役職――子を生むための道具に過ぎない。私はね、桜華には桜華のまま、美しくあってほしいんだ。誰にも――この私にすら汚されてはならない清らかな花。もちろん、他の男にだって指一本触れさせる気はないよ。だからこそ、彼女をこの後宮に入れたのだから」

「ああ、それで……」


 孝明は眉間にシワを寄せつつ頭を垂れる。


 桜華は私にとって唯一無二の神聖な存在だ。ひと目見たそのときから、彼女は私にとって特別な女性だった。

 なにがあっても桜華を汚してはならない。私の手で守り、慈しまなければならない――――それこそが、私に課せられた使命なのだろうと思えるほど、私は桜華を大切に思っている。

 それがなぜなのか――――別に、特別なエピソードがあったわけではない。
 正直、私にも理由はわからない。


(けれど、理由なんて必要ないだろう?)


 私は桜華を愛している。これはゆるぎない事実だ。
 そしてそれは、これから先も絶対に変わることはない。私には断言できる。桜華への想いは、私の根幹をなすかけがえのないものだからだ。


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