君は私のことをよくわかっているね
「――――ようやく君を迎えにこれた」


 闇夜を切り裂く低い声。驚きに目を見開いたその瞬間、誰かがわたくしを背後からギュッと抱きしめた。

 風たちがざわめき、星々が一斉に流れはじめる。わたくしたちの周りに星明りが集まり、神秘的な空間へと早変わりする。


「誰?」


 ふわりと香る甘い香りも、たくましい腕も、声も、龍晴様とは違っている。絶対に彼ではない。

 けれど、見知った宦官たちのものとも違うように思う。第一、彼らは絶対にわたくしを抱きしめたりしない。

 おそるおそる振り返ってみる。すると、そこにはこの世のものとは思えないほど美しい男性がいた。

 星の光を集めたかのような銀の長髪、男性とは思えないほど白くなめらかな肌、翠玉のように煌めく緑の瞳、美しい鼻梁。すらりとした長身、白地に銀の刺繍が施された漢服があまりにもよく似合っている。

 わたくしがこれまで出会ってきたこの国の住人たちとは明らかに違う。けれど、異国人という感じもしない。

 もっと特別な、別のなにか――――まるで人外の生物、あるいは神様のような。本当に人間離れした美しさを誇っている。

 けれど、そんなことがありえるのだろうか?


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