君は私のことをよくわかっているね
「やっぱり神華は――私のことを覚えていないんだね。会えば、思い出してくれるかもしれないと期待していたんだが」

「え?」


 どこか寂しそうな声音に目をみはる。


(神華? もしかして、この方は人違いをしているのだろうか?)


 けれど、現在、この国でその名を付けられるものはいないはずだ。何故ならその名は、この国の建国者――――初代皇帝・地龍様の母親の名前なのだから。


「あの……わたくしは、桜華と申します。あなたとは初対面のはずで……」

「天龍だ。確かに、新たに生を受けてから君と会うのはこれがはじめてだよ。だけど私は、天界からずっと君のことを見ていた。ようやく今日、地界に降りれられる年齢になったんだ」

「え? ……天龍、様?」


 説明を受けてみたところで、やっぱりわたくしは彼のことを知らない。
 新たに生を受けて? 天界? 地界? 降りる? 彼の言うことはわからないことだらけだ。正直、わたくしは面食らってしまう。

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