君は私のことをよくわかっているね
4.語られぬ歴史
静まり返った後宮のなか、わたくしは見知らぬ男性――――天龍様に抱きしめられている。
(もしかして、夢なのかしら?)
むしろ、そう考えたほうがしっくりくる。だって、この後宮に龍晴様以外の男性が存在するなんてありえないもの。後宮の管理人であるわたくしが知らない宦官などいないし、どう考えたっておかしな状況だ。
本当は『なんで? どうやってここに入ったの?』と確認すべきだって――咎めるべきだってわかっている。
だけど、そうしたらこの甘やかな時間が終わってしまう気がして。わたくしは未だに口を開けずにいる。
「神華――――今は桜華、だったね」
「……! はい、そうです」
どうやら彼は、わたくしの名前を正しく知っていたらしい。わたくしは思わず顔を上げる。
「22年前、地界に君の息吹を再び感じられたとき、私は本当に嬉しかった。すぐにでも会いに来たかったのだが、天界の掟で100歳を過ぎるまでは地界に降りれなくて……ようやく今日、君に会いに来ることができたんだ」
「え? ……つまり、天龍様は100歳でいらっしゃるのですか?」
「そうだよ」
サラリと返事をされたものの、にわかには信じられない状況だ。
だって、彼はどう見たってわたくしと同年代の青年にしか見えない。それに、『天界』とか『地界』とか、まったく聞き馴染みのない言葉なんだもの。
(もしかして、夢なのかしら?)
むしろ、そう考えたほうがしっくりくる。だって、この後宮に龍晴様以外の男性が存在するなんてありえないもの。後宮の管理人であるわたくしが知らない宦官などいないし、どう考えたっておかしな状況だ。
本当は『なんで? どうやってここに入ったの?』と確認すべきだって――咎めるべきだってわかっている。
だけど、そうしたらこの甘やかな時間が終わってしまう気がして。わたくしは未だに口を開けずにいる。
「神華――――今は桜華、だったね」
「……! はい、そうです」
どうやら彼は、わたくしの名前を正しく知っていたらしい。わたくしは思わず顔を上げる。
「22年前、地界に君の息吹を再び感じられたとき、私は本当に嬉しかった。すぐにでも会いに来たかったのだが、天界の掟で100歳を過ぎるまでは地界に降りれなくて……ようやく今日、君に会いに来ることができたんだ」
「え? ……つまり、天龍様は100歳でいらっしゃるのですか?」
「そうだよ」
サラリと返事をされたものの、にわかには信じられない状況だ。
だって、彼はどう見たってわたくしと同年代の青年にしか見えない。それに、『天界』とか『地界』とか、まったく聞き馴染みのない言葉なんだもの。