君は私のことをよくわかっているね
(天龍様は記憶を打ち明けてくださったのに、わたくしは彼のことをちっとも思い出せない)


 誰かに求めてもらえること、愛してもらえることはこの上なく嬉しい。当然だ。何年もの間、叶わぬ恋に身を焦がしていたんだもの。

 だけど、本当は人違いなんじゃないかって。
 わたくしには、誰かに愛してもらうような資格なんてないんじゃないかって。
 あとから間違いだってわかって、捨てられてしまうんじゃないかって。
 ――――そういうことを考えてしまう。


 それに、天龍様は一途にわたくしを思ってくださっていたというのに、わたくしは龍晴様に惹かれていたんだもの。そんな女性で本当にいいのだろうか?


「桜華は私たちの子孫に――龍晴に惹かれているのだったね」

「……!」


 知られていた。天龍様に。
 わたくしが、龍晴様を想ってきたということを。

 もしかして、天界というのは地界のできごとすべてを見ることができるのだろうか? わたくしは驚きに目を見開きつつ、静かにうなずく。


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