君は私のことをよくわかっているね
「すみません。わたくし……」

「謝る必要はない。当然のことだと思うよ。彼には私の面影がある――――相当薄くはなっているが、私の遺伝子を受け継いでいるのだからね。だからこそ、桜華は龍晴に惹かれたんだ」


 天龍様はそう言って静かに息をつく。わたくしは思わず目を瞠った。


「それから、あの子はあの子で君の中に神華の――母親の面影を見たのだと思う」

「え?」


 龍晴様が? わたくしが首を傾げると、天龍様はコクリとうなずいた。


「桜華は龍晴にとって、決して汚してはならない聖域。誰よりも愛しく、誰よりも尊い。けれど、女性として愛することはできない――――そういう存在なんだと思う」

「そう、ですか……」


 悲しいかな。天龍様の仰りたいこと、なんとなくわかる気がする。
 龍晴様が口にする『愛している』はいつも、わたくしの求めている感情とは違っていた。彼がわたくしをそういう対象として見れないということは、薄々感づいていた。

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