君は私のことをよくわかっているね
***
「おはよう、桜華。今日も桜華は誰より美しいね」
「龍晴様、おはようございます」
少しだけ身構えていたものの、龍晴様はいつもと同じ、朗らかな笑みを浮かべていた。むしろ、いつもより上機嫌かもしれない。内心で困惑しつつ、わたくしは深々と頭を下げた。
「朝食をともに、とうかがっておりますが」
「うん。桜華は私にとって特別な女性だからね。一緒に朝食を食べたら幸せな気持ちで一日を過ごせるだろうと思ったんだ」
「それは……光栄です。ありがとうございます」
魅音様がなにかやらかしたのかとハラハラしていたけれど、そういうわけではないらしい。
(よかった。昨夜の相手に彼女を推薦したのはわたくしだもの)
わたくしはホッと胸をなでおろした。
とはいえ、当の魅音様は今頃相当イライラしていることだろう。無理もない。本来ならば、自分が龍晴様と食事をするはずだったんだもの。その機会を奪われたと逆恨みをされる可能性だってゼロではない。龍晴様本人に文句を言えるはずがないのだし、怒りはわたくしに向かうはずだ。
女の自己顕示欲と嫉妬ほど、醜く面倒なものはない。まあ、わたくし自身がものすごい嫉妬心にまみれているからこそ余計にそう思うのだろうけど。
「そういえば、今日は最初から名前で呼んでくれるんだね。嬉しいよ」
「え? あ……そういえば、そうですわね」
指摘をされてはじめて気づいた。いつもいつも、龍晴様の想いを確認したいがために、わたくしは『陛下』って呼ぶようにしていたから。
「おはよう、桜華。今日も桜華は誰より美しいね」
「龍晴様、おはようございます」
少しだけ身構えていたものの、龍晴様はいつもと同じ、朗らかな笑みを浮かべていた。むしろ、いつもより上機嫌かもしれない。内心で困惑しつつ、わたくしは深々と頭を下げた。
「朝食をともに、とうかがっておりますが」
「うん。桜華は私にとって特別な女性だからね。一緒に朝食を食べたら幸せな気持ちで一日を過ごせるだろうと思ったんだ」
「それは……光栄です。ありがとうございます」
魅音様がなにかやらかしたのかとハラハラしていたけれど、そういうわけではないらしい。
(よかった。昨夜の相手に彼女を推薦したのはわたくしだもの)
わたくしはホッと胸をなでおろした。
とはいえ、当の魅音様は今頃相当イライラしていることだろう。無理もない。本来ならば、自分が龍晴様と食事をするはずだったんだもの。その機会を奪われたと逆恨みをされる可能性だってゼロではない。龍晴様本人に文句を言えるはずがないのだし、怒りはわたくしに向かうはずだ。
女の自己顕示欲と嫉妬ほど、醜く面倒なものはない。まあ、わたくし自身がものすごい嫉妬心にまみれているからこそ余計にそう思うのだろうけど。
「そういえば、今日は最初から名前で呼んでくれるんだね。嬉しいよ」
「え? あ……そういえば、そうですわね」
指摘をされてはじめて気づいた。いつもいつも、龍晴様の想いを確認したいがために、わたくしは『陛下』って呼ぶようにしていたから。