君は私のことをよくわかっているね

6.妃たちの怒り、皇帝の怒り

『なんで⁉ どうしてわたしじゃなくてあの女のところに行ったの⁉ 昨夜はあんなにも情熱的に愛し合ったっていうのに! どうして!』


 わたくしは静かにため息をつく。目の前の侍女は、申し訳無さそうな表情を浮かべつつ、何度も何度も頭を下げた。


「別に、あなた自身の言葉じゃないのだから、そんなに怯える必要はないのよ?」

「桜華様……ありがとうございます。けれど、今朝の魅音様は本当に恐ろしくて……思い出すだけで身が竦むほどなのです」


 彼女は後宮側が用意した魅音様付きの侍女だ。実際のところ、侍女というより、妃とわたくしとの橋渡し役を担っている。
 広大な後宮。懐妊の兆候をいち早く掴むためには、内部情報を知るものの存在が不可欠だ。それ以外にも、妃たちの不満やトラブルの有無、その前触れ等、いろんな情報を流してもらっている。

 もちろん、妃たちも彼女たちの役割をきちんと熟知している。


(つまり、魅音様がぶちまけたご不満は『わたくしに聞かせるために』あえて言葉にしているってことなのよね……)


 さすが、魅音様は本当に気が強くていらっしゃる。わたくしはもう一度ため息をついた。


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