君は私のことをよくわかっているね
(なんのために――って、自己顕示欲を満たすためでしょう?)


 自分は陛下と閨をともにしたんだって。寵愛を受けたんだって。それを他の妃たちに知らしめて、優越感に浸るための儀式のようなものだってことは理解できる。もしもわたくしが彼女の立場なら、同じように考えただろう。


「勘違いをなさらないで。陛下を管理するだなんておこがましい……わたくしはあなたたち妃を管理する立場にあります。そもそも、陛下が間違っていると仰るなんて――妃としてあるまじき行為です。わたくしたちは陛下の御心のままにお仕えすべき存在。先程の言葉、陛下の耳に入ったらどうするおつもりです?」


 けれど、自分たちの感情が傷ついたからと、龍晴様が間違っていると断じるのは明らかにおかしい。嫉妬で我を見失いすぎだ。この妃は、最近では龍晴様のお相手に選ばれる機会も少なかった方だし、相当鬱憤が溜まっていたのだろう。それにしたって、あまりにも浅慮だ。
 わたくしが咎めれば、妃はパッと顔を赤く染めた。


「口は災いの元、気をつけなさい。今の言葉は聞かなかったことにするわ」


 わたくしは後宮の管理人。彼女を罰するのは簡単だ。けれど、わたくしはいたずらに権力を振りかざそうとは思わない。

 とはいえ、妃たちのほとんどが当初の勢いを失う。
 と同時に、魅音様がぐいと身を乗り出した。


「陛下のなさることは当然、すべて正しいわ。わたしが言いたいのは、たかが後宮の管理人のくせに、思い上がっている女がいるってことなのよ」


 明らかな蔑みの言葉。わたくしは静かに魅音様を見つめ返した。


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