君は私のことをよくわかっているね
「あの……龍晴様はどうしてこの時分に後宮へ?」


 日中に彼が後宮を訪れることは稀だ。本来なら、なにが用事があるときは、事前にわたくしの元へ連絡が来る手はずになっている。
 それなのに、今日はそれがなかった。


(これではまるで、まるで――――はじめからこうなることを予想していたみたいじゃない)


 どうか違うと言ってほしい。わたくしはブルリと背筋を震わせる。


「もちろん、桜華を守るためだよ?」


 けれど、龍晴様が口にしたのは、とても残酷な言葉だった。

 つまり、こうなることをわかっていて、龍晴様はわたくしと朝食をとったのだ。妃たちを嫉妬させるために。わたくしに敵意を向ける妃を炙り出すために。


(もしも龍晴様に見つからなければ、今日のことは不問に付すつもりだったのに)


 はじめから彼女たちを罰することが目的なら、わたくしにできることはなにもない。もちろん、処罰をわたくしに一任してくださるなら話は別だけれど、おそらくは難しいだろう。魅音様の取り巻きの妃たちなどは特に、巻き込まれただけなのだし、なんとも気の毒な話だ。わたくしは思わず下を向く。


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