君は私のことをよくわかっているね
「なんでも今日、後宮史に記すべき出来事が起きたとか」
「……さすが、耳が早いのね」
事件はつい先程起きたばかりだ。もちろん、彼らは後宮内の出来事を記録するのが仕事だし、箝口令が敷かれているわけでもないから、当然といえば当然なのだけれど。
「後宮はじまって以来の女性管理人としてだけでなく、あなた様の名前は他の形でも歴史に残りそうですなぁ」
「そうね……あまりいいことではないけどね」
皇帝陛下を惑わし、複数の妃を罰した悪女――――事実だけを切り取れば、そういう表現にならなくもない。
宦官たちはふふ、と目を細めてから、わたくしに向かって拱手をした。
「よいではございませんか。あなた様がその気になれば、この国を裏から掌握することもできましょう。陛下は桜華様のご意見ならば耳を傾けます。歴史に名を残した皇后たちと同じことができるはずです」
「そんなこと、考えたこともないわ」
首を横に振りそっと微笑む。
龍晴様の即位以降、わたくしは後宮から出たことがない。だから、現在の国の状況は、人から漏れ聞いた情報でしか判断できない。
けれど、龍晴様の治世は、過去の名君たちに劣らない素晴らしいものだと聞いている。妃やわたくしからの干渉が必要だとは思えないのだけれど。
「……さすが、耳が早いのね」
事件はつい先程起きたばかりだ。もちろん、彼らは後宮内の出来事を記録するのが仕事だし、箝口令が敷かれているわけでもないから、当然といえば当然なのだけれど。
「後宮はじまって以来の女性管理人としてだけでなく、あなた様の名前は他の形でも歴史に残りそうですなぁ」
「そうね……あまりいいことではないけどね」
皇帝陛下を惑わし、複数の妃を罰した悪女――――事実だけを切り取れば、そういう表現にならなくもない。
宦官たちはふふ、と目を細めてから、わたくしに向かって拱手をした。
「よいではございませんか。あなた様がその気になれば、この国を裏から掌握することもできましょう。陛下は桜華様のご意見ならば耳を傾けます。歴史に名を残した皇后たちと同じことができるはずです」
「そんなこと、考えたこともないわ」
首を横に振りそっと微笑む。
龍晴様の即位以降、わたくしは後宮から出たことがない。だから、現在の国の状況は、人から漏れ聞いた情報でしか判断できない。
けれど、龍晴様の治世は、過去の名君たちに劣らない素晴らしいものだと聞いている。妃やわたくしからの干渉が必要だとは思えないのだけれど。