君は私のことをよくわかっているね
「神華様って、本当にすごい人だったのね」


 どの資料を見ても、こぞって神華様のことを褒め称えている。彼女の起こした数々の奇跡に加え、穏やかでとても懐が広く聖母のような人柄だったこと。それから、人々に慕われていたということが記されている。


(わたくしが彼女の生まれ変わり? ……やっぱり信じがたいわ)


 だってわたくしは、こんなに完璧な人間じゃない。嫉妬や自己顕示欲に塗れた、ただの人間だもの。もしかしたら、普通の人より余程ひどいかもしれない。恋に焦がれて心を乱し、涙を流すなんてこと、神華様はきっとならなかったに違いないもの。
 さっきだって、わたくしは魅音様のことを助けてあげられなかったし。


「ねえ、あなたたちは神華様に夫がいたという記録を見たことがある? もしくは、初代皇帝地龍様に父親がいたという記録は?」


 すべての資料に目をとおすだけの時間はさすがにない。わたくしが尋ねれば、宦官たちはそろって首を横に振った。


「いいえ。わたくしどもは後宮内のすべての書物を拝見しておりますが、そういった記述は残っていません」

「なるほど……やっぱりそうよね」

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