君は私のことをよくわかっているね
「ああ、桜華! 会いたかった。今夜も君は驚くほどに愛らしいね」

「陛下――――お待ちしておりました」


 夜、龍晴様を後宮に迎え、わたくしは恭しく頭を下げる。


「桜華、呼び方。違うだろう?」


 龍晴様が瞳を細める。わたくしは静かに首を横に振った。


「……わたくしはしがない後宮の管理人でございますので」

「その後宮の管理人は、私にとって誰よりも尊い存在だ。桜華、命令だよ。私の名を呼ぶんだ」

「――――龍晴様」


 毎日のように繰り返される同じやり取り。龍晴様はわたくしを抱きしめ、頭を優しく撫で、それから極上の笑みをお向けになる。

 本来、一女官が皇帝の真名を口にするなんてありえないし、とても許されることではない。
 けれど、龍晴様は皇帝に即位してなお、わたくしにご自分の名前を呼ばせたがる。まるで唯一無二の恋人のように。彼の名を呼ぶことを許し、それからお求めになる。


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