君は私のことをよくわかっているね
「明日が来るのが楽しみだ」


 天龍様がそう言って微笑む。わたくしは大きくうなずいて、天龍様に微笑み返した。

 瞬きをしたその瞬間、天龍様は昨夜と同様、美しい白銀の龍へと早変わりしていた。

 星が流れる。風が吹き、大きな龍が天へと登る。
 その姿を見送りながら、わたくしは静かに息をついた。


「桜華様……?」


 けれどそのとき、わたくしは思わずビクリとした。
 背後から聞こえた男性の声音。彼はわたくしの名前をハッキリと口にした。


(誰? 一体いつからここにいたの?)


 心臓がドクンドクンと鳴り響く。恐る恐る振り返れば、宦官の孝明がそこにいた。

 彼は龍晴様が重用している若手宦官の一人で、後宮内の色んな仕事を任されている。わたくしの指揮監督権の範囲外だ。彼がどうしてここにいるのか、どんな任務を与えられているのかが、わたくしにはちっともわからない。


< 55 / 76 >

この作品をシェア

pagetop