君は私のことをよくわかっているね
「それは奇遇ね。わたくしも同じなの。寝付けずに宮殿を抜け出したら、流れ星があまりにも綺麗だったから」


 彼の様子を見るに、わたくしと天龍様とのやりとりは――天龍様の姿は見られていないらしい。

 それならなにも問題ない。きっと、このまま誤魔化しきれるはずだ。

 だって、わたくしがここにいるのはあと1日。たったの1日だけなのだもの。


「そうでしたか。けれど、夜道は暗いですし、お一人で出歩かれては危ないですよ。こういうときは、わたくしや他の宦官にお声かけください。あなたは陛下の大事な女性。御身になにかあったら、一大事です」

「あら、ありがとう。けれど大丈夫よ。こういうことはもうしないし、今から宮殿に帰ろうと思っていたところだから」

「では、わたくしが宮殿までお送りしましょう」


 孝明の言葉にうなずき、わたくしたちは踵を返す。


(気づかれてない……わよね?)


 彼がどう感じたかはわからない。
 けれど心配で、少しだけ心臓がざわめいた。
 
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