君は私のことをよくわかっているね

12.わかりません、わかりたくありません

「龍晴様、どうしてまたこちらへ? お渡りの時間にはまだ早いのでは? それに、先触れもなにも……」

「桜華、一体なにをしているんだい?」


 龍晴様はわたくしの質問には答えない。かわりに、ご自身の疑問を投げかけてきた。


「なにを? ……っ⁉」


 龍晴様の視線の先には、わたくしが書いた資料が散らばっている。わたくしは急いでそれらをかき集めた。
 けれど、龍晴様が有無を言わさずそれを奪い、静かに視線を走らせる。


「孝明から桜華の様子がおかしいと聞いたんだ。今朝は宮殿回りをしていたそうだね」

「ええ。魅音様の件で、皆様不安に思っているのではないか、と……」

「そうか。桜華は優しいね。それで、これはなに?」


 龍晴様がニコリと微笑む。表面上は普段どおり。いつもと同じ口調だ。
 けれど、その瞳はあまりにも冷たい。わたくしは身をすくませた。


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