君は私のことをよくわかっているね
「これは……今後わたくしになにかがあったときに、引き継げるものがあったほうがいいと思いまして」

「まさか、そんなことにはならないよ。桜華はまだ若く健康だし、なにかなんてあるはずがない。あっても私が全力で君を守る。そうだろう?」

「っつ……」


 龍晴様はそう言って、わたくしのことを抱きしめた。あまりの力強さに身体がきしむ。痛い――けれど、そんなことはとても言えない。このままでは息が止まってしまう――そう思ったそのとき、龍晴様はほんの少しだけわたくしを解放した。


「龍晴様……」

「桜華は一生私の側にいる。そうだよね?」

「そ、れは……」

「そうだよね?」


 ヒヤリ。首を両手で包まれ、背筋がゾクリと震える。
 天龍様と一緒にいるときにも感じる強い気――おそらくは龍神の血によるものだろう――がわたくしに襲いかかる。怖い。心臓が早鐘を打ち、涙が自然とこぼれ落ちる。反射的に首を横に振れば、龍晴様の指先に力がこもった。


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