君は私のことをよくわかっているね
「桜華は――桜華は私のものだよ? 誰よりも尊く、愛おしい、私の、私だけの」

「わたくしは尊くなどありません。他の妃たちとなんら変わりない、ただの女です。欲や嫉妬、醜い感情にまみれた、ただの女なのです」


 龍晴様はまた、どこかもの悲しげな表情をなさる。わたくしは思わず吹き出してしまった。


「ほら、ね? 龍晴様もわたくしのことをわかろうとしてこなかったでしょう?」


 本当はきっと気づいていて、それなのに見なかったふりをして、それからそっと蓋をしてきた。

 きっと、わたくしたちはよく似ている。

 龍晴様はやがて、静かに息をついた。


「わかった」


 彼がわたくしを解放する。

 わかってもらえた――ホッとしたのも束の間、視界がグラリと大きく揺れ、夕焼け空と龍晴様の歪んだ笑みがわたくしを見下ろす。背中に固い地面の感触。私はその場に押し倒されていた。


「だったら、桜華を女性として扱えば――そうしたら、君は私の側にいてくれるんだろう? それが君の望みだものね?」

「なっ! ちがっ……」


 龍晴様の唇が喉を伝う。わたくしは反射的に首を横に振った。


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