君は私のことをよくわかっているね
2.君もそう思わないか?
桜華の視線を感じながら、私はゆっくりと歩きはじめる。夕陽の沈んだ後宮は美しく、なんともいえない哀愁に満ちている。まるで桜華の心のよう――――私はふっと唇をほころばせた。
「陛下――桜華様のこと、このままでよろしいのですか?」
「うん?」
魅音の宮殿へと向かう道すがら、宦官の一人である孝明が尋ねてくる。彼は普段、私のすることに一切口を出さない、わきまえのある男だ。それが、こんなふうに疑問を呈してくるのだから、相当気にかかったのだろう。私はそっと首を傾げた。
「逆に聞くけど、このままじゃダメなのかな?」
「それは……わたくしの口からはなんとも」
皇帝である私に「ダメ」だと言える人間は当然いない。けれど、孝明が本当はどう思っているかは明白だった。私はクックっと喉を鳴らしてから、ふぅと小さく息をつく。
「どうしてそう思った?」
「桜華様があまりにも気の毒で……あんなにも献身的に陛下に仕え、お慕いしていらっしゃいますのに」
「そうだね。桜華は健気で、一途で、本当に可愛い。誰よりも愛しく思っているよ」
それは純然たる私の本心だ。
私は桜華を愛している。
この世の中の誰よりも、なによりも。
「陛下――桜華様のこと、このままでよろしいのですか?」
「うん?」
魅音の宮殿へと向かう道すがら、宦官の一人である孝明が尋ねてくる。彼は普段、私のすることに一切口を出さない、わきまえのある男だ。それが、こんなふうに疑問を呈してくるのだから、相当気にかかったのだろう。私はそっと首を傾げた。
「逆に聞くけど、このままじゃダメなのかな?」
「それは……わたくしの口からはなんとも」
皇帝である私に「ダメ」だと言える人間は当然いない。けれど、孝明が本当はどう思っているかは明白だった。私はクックっと喉を鳴らしてから、ふぅと小さく息をつく。
「どうしてそう思った?」
「桜華様があまりにも気の毒で……あんなにも献身的に陛下に仕え、お慕いしていらっしゃいますのに」
「そうだね。桜華は健気で、一途で、本当に可愛い。誰よりも愛しく思っているよ」
それは純然たる私の本心だ。
私は桜華を愛している。
この世の中の誰よりも、なによりも。