恋愛体質
私はもう一度時計を見て食器を下げた。コーヒーを一口飲む。

「誰みたい?」

母がまた聞いてきた。

「さあ。あんまり誰かに似てるとかってない。確かにイケメンだけど。」

「いいじゃなぁい。イケメンなのね。」

母は自分のことのように嬉しそうだ。成沢のあの涼しげに整った顔とすらりとした全身を見たら舞い上がってしまうこと間違いない。

私は急いで着替えを済ませてから残りのコーヒーを一気に飲んだ。

歯磨きをして化粧の仕上げをする。髪にトロピカルアロマのローションをスプレーしてからドライヤーで整えた。

リビングに戻ってネイルを乾かしていると姉があくびしながら起きてきた。

「おはよう」

私を見た姉の目が覚醒するのがわかった。

「それ、私がこの前買ったばかりの!」

「貸して。お願い。今日だけ。」

姉の目がリビングに吊されたコートへ移った。

「まさかそれも着てくつもり?」

「いいじゃん。今日だけ。今日はデートじゃないでしょ?もしデートでも貸して。お姉ちゃんは他にもいっぱいあるでしょ。」

私はネイルを乾かすために手をヒラヒラさせながら懇願した。

「まだ買ったばっかで着てないのに。」

姉は恨みがましい声でいった。
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