恋愛体質
エントランスの前に黒っぽいSUVが止まっていた。運転席の成沢が私が出てきたのを見てロックを解除する。

「おはよう。」

助手席のドアを開けて明るい声で言いながら車に乗り込んだ。

「おはよう。」

成沢は運転席側の窓に寄り掛かるような姿勢でこちらを向いて私を上から下までサッと眺めた。

「なんか違うな。」

ダメ出しされたのかと軽いショックを受ける。

「なんかいつもと違うじゃん。」

成沢はニヤリと笑みを浮かべて言った。私は心の中でガッツポーズした。

「やれば出来るじゃん。気合い入ってんな。」

「褒めるなら素直に褒めればいいのに。ひねくれ者。」

私はぷすっと膨れてみせた。

「かわいいって言って欲しかった?」

ドキッとするようなまっすぐな視線を向けられた。

「もういいよ。行こ。」

慌てて視線をはずして言った。ドキドキしていた。

「かわいいよ。」

成沢は前に向き直ってハンドルを握りながら言った。耳がカッと熱くなるのがわかった。
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