恋愛体質
シートベルトをカチッとしめた。

「いい?」

「うん。」

車が滑らかに動き出した。

「どこ行くの?」

なんて綺麗な横顔なんだろうと見とれる。

「ん・・・」

成沢はそれには答えずにコンビニに車をとめた。成沢の後に続いて私も降りた。

一瞬成沢をぼーっと眺めてしまった。考えてみればスーツを着ていない成沢は初めてだ。

かっこいい。コートといいパンツといい、センスも悪くない。でもスーツの方がセクシーだ。

引け目を感じた。成沢はまるでモデルみたいだ。それにひきかえ私は・・・

「かっこいいって眺めてた?行くよ。」

成沢にそう声をかけられて現実に戻った。

「別に眺めてなんかいません。ナルシストの成沢くん。」

慌てて否定した。

「褒めるなら素直に褒めればいいのに。ひねくれ者。」

さっきの私の台詞を口まねして成沢が言った。

「かっこいいって言って欲しいの?」

成沢は笑いながらコンビニに入っていった。私も一瞬遅れてついていった。
2人分の飲み物を買って車に戻った。ワクワクする。こんなふうにデートするのは久しぶりだ。

「トイレは大丈夫?サービスエリアまで入れないけど。」

「うん。私は平気。」

「じゃあ行くよ。」

どこへ?と聞いても教えてくれそうもないので聞かなかった。どこでもいい気がした。

冬とはいえ天気は快晴で風は穏やか。運転席にはかっこいい男。文句なし。完璧だ。
< 108 / 113 >

この作品をシェア

pagetop