恋愛体質
風景がだんだん変わっていった。徐々に住宅がまばらになり山あいや田園の中に小さな集落が点在するようになってきた。

澄んだ空の遠くに山の稜線がくっきりと見えた。

「山だ。」

思わず呟いた。

「山くらい別に珍しくもないだろ?」

成沢が言う。

「でも普段、山なんてあんまり見ないもん。」

私は言った。

「そうだよな。天気良くて良かった。」

成沢が言った。

サービスエリアで車から降りると成沢は大きく腕を伸ばした。

「疲れたでしょ。ありがと。」

私は成沢に言った。

「大丈夫だよ。」

トイレから戻り売店のほうをぶらりと歩いている成沢を見つけた。

「はい。」

2つ買ったうちの1つのコーヒーを成沢に渡した。

「おっ、サンキュ。」

空いている席を見つけて向かい合わせに座った。

「ありがとう。連れて来てくれて。」

私は言った。

「まだ着いてないよ。」

成沢が言う。

「でも天気もいいし景色もいいし気持ちいい。」

「景色がいいのはこれからだよ。」

成沢も心なしかいつもよりリラックスして見えた。ビジネススーツではなくカジュアルだからかもしれない。

「さ、そろそろ戻ろうか。」

私たちは車に戻ってまた出発した。
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