恋愛体質
いろいろな話をした。なんといっても知り合って間もないので会社のこと、家族のこと、生い立ち。

サッカー少年だったとか、私はブラスバンドをすぐにやめて帰宅部になったとか

そんなことを話した。と言っても気づけばいつも私ばかりがぺらぺらと喋っていた気がする。

どこそこで芸能人を見かけたけれど顔が超小さかったとかなんとか。

「最近一番焦ったことは?」

私は成沢に聞いた。

「今朝、出ようとしたら家の鍵がなかったこと。」

「ええっ?見つかったの?」

私はびっくりして聞いた。

「当たり前だろ?見つかってなかったら今頃ここにいないよ。」

「だよね。どこにあった?」

「洗濯機の中。スエットのポケットに入ってた。」

「よかったね。」

「うん。」

そんなどうでもいい会話をしていると車は有料道路に入って景色は山道になってきた。

雲ひとつない晴天だった。新緑の頃ならもっと気持ちよかっただろう。

ビューポイントまで来ると成沢は車を停めた。

「ちょっと降りようか。」

そう言いながらドアを開けた。私も続いておりて思いっきり大きく伸びをした。

「うわぁ。すごい景色。」

私は言った。

振り返ると成沢がいつのまにかカメラを構えていた。
< 110 / 113 >

この作品をシェア

pagetop