恋愛体質
私は蟹のようなポーズでピースを作った。

「かわいく撮ってね。」

「それは無理。いくらカメラが良くても腕が良くても被写体そのものまでは変えられない。」

ファインダーを覗きながら成沢が言った。撮り終わると私は成沢のカメラを覗き込んだ。

「代わろうか?でもどうやって撮るの?これ。」

成沢のカメラは一眼っぽいものでよくわからなかった。

「いいよ。俺は。」

成沢は言った。

「撮りましょう。」

近くにいた年輩の人が成沢のカメラを指して言った。

「あ、すみません。ありがとうございます。」

成沢はシャッターの説明をしようとした。

「大丈夫ですよ。私もこれ使ってますから。並んで。」

成沢は私の隣に立った。

「はい、じゃあ撮りますよー。」

カシャ。

「もう1枚。」

カシャ。

成沢は急いでカメラを受け取りに戻りお礼を言った。私も脇からお礼を言った。

「ツーショットが撮れたね。」

私はニッコリして言った。

「うん。」

成沢はほんの少しだけ照れ臭そうにしていた。
< 111 / 113 >

この作品をシェア

pagetop