恋愛体質
山道のカーブを成沢は滑らかに運転していった。道はだんだん下り始めてしばらくすると山をおりたようだった。

やがて海が見えてきた。

「わぁー、海だ。」

私は歓喜の声を上げた。

成沢は相変わらずの涼しい顔にほんの微かな笑みを浮かべながら運転していた。

成沢はどうして今日、こうして私を誘ってくれたんだろう。ほんの気まぐれに違いない。

そうは思ったけれどそんなことどうでもいい気がした。だってあれこれ考えたって仕方がない。

気まぐれだってなんだっていい。私の隣にはイケメンがいて窓の外に広がる海。上出来だ。満喫するしかない。

海辺の街をいくつか通り過ぎた。いくつめかの観光地のはずれ、少し高台になった開けた土地に車は入っていった。

「きれい・・・」

眼下に広がる景色に思わずつぶやいた。晴れた穏やかな海が広がっている。

「春はもっときれいだよ。」

後ろから成沢が言った。

「また来よう。」
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