恋愛体質
 午後もまた猛烈な忙しさだった。忙しいと時間が早く過ぎる感じで慣れてしまえばさほど苦にもならない。

 それでも飲み物を飲む暇もないほど喋り過ぎて喉がカラカラだった。これではまた咳の発作が出てしまう。

 疲れたので早く帰りたくなってきた。

 (やっぱり今日はキャンセルして家でゆっくりしようかな。)

 少し離れた席の絵里の方を見ると彼女も真剣な顔つきでヘッドセットで話しながらキーボードをカチャカチャやっていた。

 私も着信拒否を外して電話に出ようとした時、荒川さんに肩を叩かれた。

「ちょっといい?」

 荒川さんはそう言ってパーテーションで仕切られたミーティングスペースの方を指差した。

 (何だろう?)

 ちょっと、いや、かなり緊張しながら私はヘッドセットを外しPCにロックをかけて席を立った。
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