恋愛体質
 (何だろう?何かやっちゃったかなぁ・・・)

 不安と緊張でバクバクしながら荒川さんのあとについていった。

 荒川さんは空いているパーテーションの1つに私を座らせると自分は座ることなく

「ちょっと待ってて。」

 と言ってまた戻っていった。

 私は落ち着かない気持ちで椅子に腰掛け、壁面に貼ってある世界各国のポスターをぼんやりと眺めた。

 1、2分ほど過ぎたところで荒川さんではなく伊藤課長がやってきた。

 これはどうやら大変なことに違いないと思い、胃がキリキリと痛んできた。

 (私は何をやってしまったんだろう。)

 そんな思いが表情に出ていたのだろう。

「そんな緊張しなくていいよ。」

 課長は席に座りながらにこやかに私に微笑みかけた。

 伊藤課長は私の父ほどの年配の人だ。
 私たち下々の者にはいつも優しくユーモアも持ち合わせているが、役職者ミーティングなどではかなりシビアな発言をするらしく、厳しい一面も持ち合わせているようだった。
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