恋愛体質
 いつもより早いとは言え、ピーク時間帯は過ぎているから混雑といっても人と密着するほどの乗車率ではない。

 それでも車内を容易に移動可能なほど空いてはいなかった。もちろん座れるはずはない。

 私は人の間をぬって車両の中程の辺りに移動して吊り革につかまった。

 急いで息が上がったせいで喉のあたりに違和感を感じた。きりきりきりと気道が突然狭まり息苦しくなった。気管支炎だか喘息だか特有のいつもの症状だ。

 この状態で咳をすると「ゴン」という変な音の咳が出る。
 混んだ車内でもあり、なんとなく咳を我慢した。このまま違和感が治まってやり過ごせる時もある。

「ゴン」

 とうとう我慢が出来ずに咳をしてしまった。
 下手に我慢をしたせいで最初の咳が呼び水となって咳が止まらなくなった。

「ゴホ、ゴホ」

「ゴホ、ゴホ、ゴホ」

「ゴホ、ゴホ、ゴホ、ゴホ」

「ゴホゴホゴホゴホゴホ・・・」
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