恋愛体質
「まったく。」

 私は手の平の指輪を見つめながら独り言みたいに言った。

「これだからあんたたちみたいなナルシストって始末が悪い。」

 私は元カレのことを思い出しながら言った。

「ちょっとばかしイケメンだからって。自分に落とせない女はいないみたいに思ってる。」

 元カレは4歳年下だった。
 出会いは地元の女友達と飲みにいった居酒屋でナンパされたのがきっかけだった。それからすぐに付き合うことになった。

 私は元カレが始めから気になっていた。とにかくイケメンだったから。そしてものすごいナルシストで女はすべて自分に気があると思っていた。

 でもどこか憎めず・・・
 可愛かったから・・・小犬や子猫を可愛がるみたいに夢中だった。

 実際、女の方が放っておかないタイプだったからそうなってしまったのは彼のせいではないのかもしれない。

 付き合っている間、抱かれている時も、手をつないで一緒にいる時間はいつも

 (私は彼の彼女なのか?本当に私だけなのか?)

 そんな猜疑心に苛まれた。
 そして・・・


「何固まってんだよ。」

 ナルシストに声をかけられて夢想から覚めた。指輪を見つめていた目を上げるとナルシストが面白そうな顔でじろじろ見ていた。

 一瞬、ナルシストの顔が元カレと重なった。

「まーくん・・・どうして?ここに?」

「まーくん?まーくんじゃねえよ。しっかりしろよ。酔っ払ったか?おい。大丈夫か?」
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